どういう治療法なのか
この「脱ステロイド」という方法は、皮膚科医に対する、大変、挑戦的な方法です。
何故なら、従来の皮膚科の治療を全く無視しているようにみえるからです。
小さいころからのアトピー性皮膚炎が治らず、なんとか治したいと思い、ステロイド軟膏をつけ続け、思春期以降にいろいろな情報が入ってきて、「脱ステロイド」に入ってしまうことが多いように感じます。いや、入らざるを得ない、という感じかも知れないのです。
具体的には、一般の皮膚科医を受診しなくなり、ステロイド軟膏の塗布をやめ、漢方薬、健康食品、温泉などに頼って自分の中の自然治癒力で、皮膚炎を治そうとするのです。
この治療法の初期には、強い自律神経失調症状がでて、患者さんを悩ませます。これに耐えられなくて挫折する人も多いようです。
程度にもよりますが、病気が良くなって、症状が治まってくるまでには数ヶ月から数年かかるようです。
勿論、好き好んでこの方法を選択する人は皆無であると思いますが。
何故、この辛い治療法を選ぶのか?
医者に対する強い不信感ステロイド軟膏に対する強い嫌悪感自分の病気の将来についての強い不安感、緊張感が、多かれ少なかれ重なって、この方法を選択するのだろうと思います。
「脱ステロイド」を始め、途中で挫折して、すごくひどい状態で皮膚科医に見せるので、皮膚科医はみんな、「脱ステロイド」の事、またその人に関わっているアトピービジネスの事を「ぼろくそ」に言います。
しかし、よく考えてみるとこの非常に辛い治療法を患者さんに選択させる、責任の大部分は、間違いなく、私を含めた従来の皮膚科医達にある、と思うのです。
私はこう思う
「脱ステロイド」によって病気が良くなるのは、一言で言うとその人の持っている自然治癒力のしわざだ、と思います。それはそれでいいのです。
しかし、この治療法はあまりに過酷すぎます。
患者さんに、この「脱ステロイド」という方法をとらせないようにするためには皮膚科医に対する不信感をなくしていくことが大事だ、と思います。
そのためには、患者さんの立場に立って、話を聞いてあげ、優しく支えてあげる、という気持ちと実行が必要だと思うのですが。
医者の中には、自分の言うことをわからない、わかろうとしない患者はだめだ、という人たちがいるのは、悲しいことである、と思っています。
長いこと、想像を絶するような状態で、生活をしますから当然、その人の人生観、価値観は大きく変わるだろう、ということは想像に難くありません。
私個人としては、この人生観、価値観の変化が、その人の自然治癒力を揺り動かして徐々に病気が治っていくんだろう、と考えています。
この治療法をやっている間は、前述した理由により、皮膚科を受診できないし、外出もできず、人間関係が疎遠になります。つまり、孤独と不安で一杯になるのです。
だから、患者さんたちは種々のアトピービジネスに頼ったり、インターネット、パソコン通信のフォーラムが大切な交際場所になるんだろう、と思います。
ただ、私も医者であると同時に人間です。
目の前に、非常に辛そうにして、皮膚の状態の悪い患者さんが来れば、早く良くしてあげたいと思うのが人情ですから、ステロイド軟膏をつけることを勧めます。
でも、患者さんの意志が第一ですから、「脱ステロイド」中であればステロイドを使わないで何とかサポートしてあげようと思っています。
これが、私の考える親切であり、思いやりだと思っています。
くれぐれも言っておきますが「ステロイド軟膏を使わないから、アトピー性皮膚炎が治る」のでは、ないのですよ。