人間が適応する、という事について少し書いてみたいと思います。
これは、その個人が周囲の環境に対してどういうふうに適応するか?ということで、言い方を変えれば、人間関係をどう作って行ったら良いのか?という事です。
社会生活を営む上に、まず考えなくてはいけないのは、人間関係だからです。
引っ越し、入学、進学、転勤、転職、結婚、入社などの他、親戚付き合いなど普段の生活、仕事の中にも、新たな人間関係の構築は必要なことが多いものです。
普段つきあっている人とも時間、場所が変われば、いつもとは違った人間関係が作られることもあるわけです。
私など外来で1日100人~120人の患者さんといろいろな話をしながら診療をしていますが、その時は一所懸命その場、その場の雰囲気に自分を適応させようと努めています。
こわそうな人には表情を和らげるように、だらしのない感じの人には少し口調を強く、優しい感じの人にはその雰囲気を壊さないように、話をしているわけです。
でも時々、すごく嫌なタイプの患者さんもいます。
その時は自分の怒りを抑えて、無理に優しくして、怒らせないように帰すわけです。
そして、その後、自分の部屋に行き、一服することにしているのです。
普段の元通りの自分にゆっくり戻してから、又診察を始めるのです。
診察が終わったら終わったで、家に帰れば女房、子供がいます。
又、新しい環境に適応するように自分を変えていくのです。
皆さんも仕事の種類、生活は違うかもしれませんが、同じようなものでしょう。
ただ、人間という動物は「欲」があります。特に、他人に良く思われたいという欲求です。
これが意識、無意識を問わず結構やっかいなのです。
環境が新しくなれば
「自分のことを良く知ってもらいたい。」
「自分の事を良く思ってほしい。」
「嫌なやつだとは思われたくない。」
「いいやつだと思われたい。」
こう思うほうが自然です。
人間はこういう欲求が高じてくると、知らずしらずに無理をしてしまう動物なのです。
上司に好かれたいと思うと、残業を二つ返事でOKしてしまう。
高く評価されるかもしれないと思えば、徹夜も辞さないでやる。
いいやつだと思われたい為に、行きたくもない所につきあってしまう。
いい子だと思われたいから、お母さんの前では、お利口さんにする。
皆さんにも思い当たる節があるんではないでしょうか?
だから、だめだ、ということではありません。程度問題なんだと思います。
こういう無理がだんだん多くなってきて、本来の自分とかけ離れた存在になって来たときこういう状態を「過剰適応」と言うのです。
要するに「他人の評価をあてにして、自分がいろいろと無理をしてしまう」状態を言います。
アトピー性皮膚炎を始めとする種々の湿疹、皮膚炎、円形脱毛症、蕁麻疹などの心身症といわれる皮膚病の患者さんには、こういう傾向のある人が非常に多いのです。
他人の評価などあてにせず、目の前にある仕事、作業を、「やりたければやる、やりたくなければやらない」という風にできれば、最高なんですが。(これがいいか、どうかは難しい。)
私は、「やる」「やらない」という事ではなくて、その時に、よーくもう一人の自分とゆっくり相談する事が大切なんだろうと思っています。